高い演算処理能力を持つ、耐放射線宇宙用マイクロプロセッサ PC8548:
Teledyne e2vの開発した、ギガヘルツのレベルで動作するQML認証を取得したマイクロプロセッサをご紹介します。このマイクロプロセッサは、これまでにない演算性能を持っています。
- はじめに
これから、お客様を宇宙にご招待します。お連れするのは、上空の星に近いところ、少なくとも、人工衛星の軌道に近いところです。
宇宙システムの設計者の中に、テレコミュニケーション、地球観測、そしてAIなど負荷の大きな演算用の先進的なギガヘルツプロセッサを搭載した耐放射線システムを夢見たことのない設計者がいるでしょうか。
Teledyne e2vの宇宙向けマイクロプロセッサポートフォリオでは、PC8548がこの用途に最適です。主な機能は以下のとおりです。
- コア動作周波数1.2GHz、DMIP値は2200以上
- LEO(低周回軌道)やGEO(静止軌道)、長期ミッションにおける
- TID(トータルドーズ)などに対応する75kRad(Si)までの耐放射線性
- SEL(シングルイベントラッチアップ)耐性 86 MeV.cm2/mg まで
- 宇宙用としての経験値
- これまでのフライトモデル数 250
- 製造リードタイムを最適化し、フライトモデルの入手性を向上
製品の詳しい内容を見る前に、もう少し概要を説明します。
- PC8548 耐放射線マイクロプロセッサと耐放射線マイクロコントローラとの違い
宇宙用マイクロプロセッサの文脈で混同しがちなのが、マイクロプロセッサとマイクロコントローラ、そして耐放射線(RAD TOL)と「設計段階の放射線耐性強化」(RAD HARD)という用語です。
宇宙用マイクロプロセッサは、負荷の高い全ての演算を実行しながらも、放射線による事象や故障を検出し、サブシステムをリセットして対処することが可能です。
モニタリング、電源管理、監視などのタスクを宇宙で実施する際、宇宙空間でシステム(または人口衛星)の故障(ラッチアップやシングルイベント・ファンクショナル・インタラプトなど)が確実に発生しないようにするには、放射線耐性を強化したマイクロコントローラが最適です。図1に、これらの違いを示します。
Figure 1: マイクロプロセッサとマイクロコントローラの耐放射線性
- PC8548 宇宙用マイクロプロセッサの特徴
PC8548はPower Architecture® e500 コア、SDRAM/DDR/DDR2メモリコントローラなどの周辺回路と高速通信インターフェースをオンチップで配置しています。
- PC8548はクロック周波数1.2GHzまで対応可能な倍精度の浮動小数点ユニットを内蔵したe500コアを搭載しています。
- 組み込みメモリコントローラと一体化されたキャッシュは誤り訂正符号(ECC)で保護されており、宇宙放射線にさらされる環境下において、プロセッサのメモリ素子に発生するシングルイベントアップセット(SEU)を緩和します。
- また、マイクロプロセッサは、Gigabit Ethernet(GbE)、PCI Express®およびNASA認定のSerial RapidIO®などの高速接続オプションにも幅広く対応しているため、宇宙船に搭載するプロセッサとASICやFPGAとの高速通信が可能です。
- PC8548 の統合型セキュリティエンジンやオプションの暗号化は、デリケートな処理を可能にします。これにより、暗号化アルゴリズムで保護された安全な通信が可能になるのです。
宇宙で使用する製品において、信頼性は最も重要です。PC8548はQML Y品質規格に準拠しています。QML Y品質規格はNASAが主導する作業部会で定義されたもので、公式な最新版はDLA MIL-PRF-38535です。従来のQML V品質規格は、古い仕様の密封型組み立てプロセスのみの対応で、新世代の(フリップチップセラミックなど)組み立て技術やサブセット製造、スクリーニング、品質認定は考慮されていませんでした。
QML Y品質規格であれば、宇宙システムメーカーが最新の技術を利用しながら、製造した各デバイスが十分に検証されていることを保証できます。PC8548はQML Y品質規格に準拠した、フリップチップ実装の非密封型宇宙用マイクロプロセッサなのです。
Figure 2: NXP PC8548 ブロックダイアグラム
- PC8548 宇宙用マイクロプロセッサの性能
PC8548の性能は図2にあるように、LEON3ベースの宇宙システム・オン・チップに比べて9倍、より新しいクアッドコアのLEON4ベースの宇宙システム・オン・チップと比べても35%、パワフルになっています。
Figure 3: 性能比較
- 耐放射線性能:
以下にPC8548の耐放射線性能をまとめます。Teledyne e2vでは放射線試験キャンペーンを実施しています。お客様からご要望があれば、放射線耐性報告書をご用意いたします。
- シングル・イベント・アップセット(SEU) 断面積 86 MeV.cm2/mgまで
- シングル・イベント・ラッチアップ(SEL) 86 MeV.cm2/mgまでラッチアップなし
- トータル・イオン・ドーズ(TID) 75 kRad (SI)
PC8548はQML Yに準拠した、フリップチップ実装の非密封型耐放射線宇宙用マイクロプロセッサです。
- フライトヘリテージ(宇宙機器使用実績)、宇宙品質認証および製造リードタイム
Teledyne e2vではこれまで、フライトモデル数で250以上の製造と納品実績があります。
この中には、通信衛星のようによく知られた宇宙プログラムで使用されているものもあります。PC8548はこれまで、主にLEO向けの用途に使われており、宇宙における製品寿命は10~15年です。
Teledyne e2vでは、PC8548のフライトモデルをヨーロッパ、米国、アジアに出荷しています。
宇宙システムの設計者やメーカーは、フライトモデル製造が長期間にわたるプロセスであり、宇宙レベルのスクリーニング、ロットごとの品質認証と品質適合検査が含まれることを知っています。
しかし、宇宙分野の高いレベルで成功経験を積んでいることから、Teledyne e2vの宇宙用プロセッサは既製品として在庫を確保しておりますので、フライトモデルは4週間以内に、同一ロットから納品が可能です。
Teledyne e2vの宇宙向け製品の品質認証についての詳細については、A0またはA1サイズのポスターを無料でお配りしております。
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