宇宙船内でデータ処理を行うには通常、高速なデータ処理を行うことができる高いコンピューティング能力が必要となります。これらのアプリケーションの例としては、地球観測のための画像処理、自動着陸、デブリ回避のための船内での意思決定などが挙げられます。これらの用途ではデータを分析して意思決定を行うために、従来のコンピューティング手法だけではなく、人工知能に頼るケースも増えています。AI の実践に求められる高い処理能力と特殊性ゆえに、最速のプロセッサを使用するだけでなくニューラルネットワークによるリソースの最適化をすることも重要となります。純粋なコンピューティング性能に加えてもう一つ必要なのは、複数の機能を管理し、場合によっては複数のユーザーにサービスを提供するために、複数のタスク（つまりニューラルネットワーク）を並行して運用する能力です。これは、マルチコアプロセッサによって異なるコアにタスクを分割することと、リソース（CPU 使用量なメモリなど）を効率よく共有できる柔軟な形でソフトウェアを実装することの両方によって実現されます。

Klepsydraはスイスの企業で、宇宙、航空、スマートモビリティ、IoT 産業のアプリケーションに対応する自律型組み込みシステム向け高性能エッジデータ処理ソフトウェアの開発に注力しています。Klepsydra は、利用可能なオンボードコンピュータで必要なコンピューティングと人工知能・機械学習のタスクを実行できる高性能SW フレームワークを提供します。

Teledyne e2vは、宇宙でのエッジコンピューティングを支援するためにプロセッサ、メモリ、処理モジュールなどの宇宙対応デジタルコンポーネントを提供しています。LX2160 Space は、16 コアのARM ® Cortex ® A72 を搭載した最新世代の耐放射線プロセッサで、200,000 DMIPs/280 GFLOPs の画期的なコンピューティング能力と、PCIe Gen3.0 や最大100 Gb のイーサネットなどの多数の高速インターフェースを備え、他のサブシステムとインターフェース接続できます。これらの特徴から、LX2160 Space は、飛行中に複数のAI タスクを実行し、宇宙船の「頭脳」の役割を果たす理想的な候補といえます。

このホワイトペーパーでは、Teledyne e2v LX2160 Space プロセッサで動作するKlepsydra ソフトウェアを使用したAI 画像並列処理の実装について説明します。まず、一般的なAIaaSAIaaS（サービス形式のAIAI）アプローチを紹介します。次に、ニューラルネットワークの詳細を含めケーススタディに使用されるシナリオについて説明します。最後に、主なパフォーマンス結果を提示します。

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